M&Aの流れと期間!平均は半年から1年半、早いと3ヵ月で最終契約が成立

M&A

M&Aってどれくらいの期間が掛かるの?ということを聞かれることが多いです。これに関しては案件によって差があります。

依頼を受けてから、早いと6ヵ月、一般的には1年前後といった感覚です。売り手と買い手の相性が非常に良く、全ての流れがスムーズに行けば3ヵ月ほどで最終契約書の締結までいくこともあります。

ちなみに小規模なスモールM&Aですと1ヵ月程度で完了することもあります。買い手と売り手だけの直接交渉であれば、そういったことも起こり得ます。

今回はM&Aの流れの中でその部分にどれだけの期間が掛かるのかというスケジュールをそれぞれ細かく見てみましょう。

M&Aの流れ(スケジュール)と期間

流れ期間内容
1.準備段階(企業分析・資料作成)1~3ヵ月・財務諸表等の必要書類を収集
・提案資料の作成
・条件や売却額の検討
2.相手先探し・提案1~3ヵ月・候補先を選定し匿名で打診していく
・強い希望を持つ相手と秘密保持契約を結び社名公開
・詳細な情報を伝え提案
3.交渉1~3ヵ月・双方のトップ同士による面談
・買い手から買収の意向や条件を提示した「意向表明書」を提出
・条件の交渉
・基本合意書締結(独占交渉へ)
4.デューデリジェンス(精査)2週間~2ヵ月・財務、法務、税務、事業継続性、将来起こり得るリスクなどを買い手側が細かく精査
・デューデリジェンスを踏まえての最終的な交渉
5.クロージング2週間~1ヵ月・最終契約書(譲渡契約書)の締結
・代金決済、株式授受
・その他手続き

M&Aのスケジュールの詳細

1.準備段階(企業分析・戦略立案)

M&Aの意向を決めたら、財務諸表等の必要書類を準備します。そしてそれをもとに企業の分析と価値の算定を行います。そして売却希望額などを決めていきます。

そして買い手に提案するための企業概要書などの資料も作成します。

また、どのような相手に売却したいのか、どのような条件をつけたいのかといった方針を決めます。

2.相手先探し・提案

方針が定まったら、M&A仲介会社やアドバイザーが候補企業を探し、打診すべき相手を決定します。

売り手側は、買い手側に企業情報を提供する際、最初に「ノンネームシート」と呼ばれる匿名化された企業情報を提供します。これには大まかな事業内容などが記載されますが、企業名や詳細なデータは含まれていません。これにより、情報漏洩のリスクを低減しつつ、買い手を選別することが可能です。

☑︎ノンネームシートで会社名がバレる!リスク管理どうする?

そして、買い手が興味を持った場合、秘密保持契約を締結し、売り手は詳細な企業情報を買い手に提供します。これをインフォメーションメモランダム(IM)と呼び、財務状況、事業内容、将来の成長戦略などの情報が含まれます。IMを通じて買い手はより具体的な企業価値を評価できるようになります。

3.交渉

相手先を決定した後で、売り手と買い手のトップ同士による面談を行い、双方の価値観の確認や疑問点の確認を行います。基本的には1回のみですが複数回行うこともあります。

トップ面談が終了し、M&Aを先に進めたいと思ったら、買い手は買収の意向や条件を記した「意向表明書」を提出します。

それから、M&Aの方法や金額、双方の希望条件をすり合わせる交渉が行われます。それらに合意したら「基本合意書」を結びます。基本合意書には独占交渉権を発生させる条項を含めることが一般的です。

☑︎基本合意書を締結した後にM&Aが破談になる確率。中間金は払い損になる

4.デューデリジェンス

買い手が売り手企業の詳細な情報を確認し、買収のリスクを最小化するために行う調査がデューデリジェンス(DD)です。主に以下のような内容を精査します。

  • 財務DD:財務状況を確認し、将来のキャッシュフローや収益性の予測を行います。過去の財務データだけでなく、潜在的な負債や隠れたリスクも洗い出します。
  • 法務DD:売り手企業の所有権や契約状況、法的リスクの調査が行われます。訴訟案件や知的財産権の状況なども確認され、将来の法的リスクを見極めます。
  • 税務DD:税務リスクや優遇措置の適用状況を確認し、買収後の税務負担やリスクを明らかにします。
  • 労務DD:従業員の雇用形態、契約内容、福利厚生の内容や退職金規定などが詳細に確認されます。また、労働組合の存在や労使関係の状況もチェックされ、潜在的な労務問題が発生しないか精査されます。

DDを通じて得られた情報に基づき、売り手企業の企業価値(株式価値)が再評価されます。財務DDの結果に基づいて将来の収益予測やリスクが調整され、これに応じて最終的な売買価格の妥当性が確認されます。

5.クロージング

基本合意書の内容を踏まえ、最終契約の締結に向けて細部が調整されます。

最終契約書には、売買条件や買収後の義務、補償内容などが詳細に盛り込まれます。たとえば、売り手が買収後に特定の目標を達成することや、一定期間の支援を行う義務などが含まれることもあります。こうした内容は、双方の利益を守るために重要です。

最終契約が双方で署名されると、いよいよM&Aのクロージングが完了します。この段階では、買収資金の支払いや株式の移転などが実行され、法的に買い手が売り手企業を所有することが確定します。

事前の相談は1日から数年

上記で説明したスケジュールでは敢えて記載しませんでしたが、M&A仲介会社やアドバイザーに正式に依頼する前の相談期間もケースごとにかなり差があります

初めて相談に来た日にすぐ依頼することもあれば、それから何年もしてから依頼をするということもあります。

M&Aを行うということは大きな決断ですから、様々な不安や迷いが生じるのです。今が正しいタイミングなのか、従業員は幸せになるのかといったことを考えるのです。

また、今まで全身全霊を掛けてきた会社を売却することで、生きがいを無くし喪失感に苛まれるのではないかと精神的な心配をすることもあります。

もちろん、「このM&A仲介やアドバイザーで大丈夫か?」と疑念を抱くこともあります。

☑︎M&Aのアドバイザーは怪しい奴らばかり。胡散臭い相手を見極める注目ポイント

M&Aで最も時間が掛かること

M&Aで最も時間が掛かり、なおかつ最も重要なことは何かというと、成立後の経営統合です。

それまで異なる文化で働いてきた同士が一緒になるわけですから、多少の衝突や勘違いが起こることは避けられません。それを乗り越え、M&Aのシナジーを最大化するためには、両社の従業員の協力と理解が必要です。

そのためにもM&Aの交渉段階から禍根を残さないことが大事です。相手を尊重しているつもりでも、何気ない一言で気を悪くさせることもあります。

また、必要な書類の提出や、質問に対する返答が遅いと誠実ではないと思われることもあります。

私としても、一方から「あの件どうなってますか?」と聞かれて「まだ、返答が来てません」と答えるとき、ちょっとマズいかもしれない…と感じることも少なくありません。

M&Aの決断まではじっくりと時間を掛けても良いですが、相手が決まった後は誠実に対応することが求められます。