起業家や社長というのは多くの修羅場をくぐっているので、人を見る目は確かなはずです。
しかし、非常に単純でアホみたいな投資詐欺に引っ掛かる人間もいます。
詐欺ではないにしろ価値のない投資信託や不動産、スタートアップに投資してしまうことがあります。
なぜこんなにも簡単に騙されてしまうのでしょうか?
それは「自分は経営者の中でも平均よりは上の能力がある(だから騙されるほど無能ではない)」という思い込みを持っているからです。
経営者に限らず人間は自分を評価するときに少し甘くなってしまうことがあります。
トップの1%に入ってはいないにしろ平均よりは上だろうと考えます。
こういった傾向は社会心理学の世界で「幻想的な優位性」または「ポジティブな幻想」として知られています。
しかし当然ですが半分の人は間違って評価していることになります。
レイク・ウォビゴン効果とは
自分を過大に評価する認知の偏りのことを「レイク・ウォビゴン効果」と呼びます。
自分は平均よりも優秀だろうとか、自分は災害に巻き込まれないだろうという考えは全てこの効果とされます。
さきほどいった「幻想的な優位性」や「ポジティブな幻想」を生み出すのもこの効果です。
レイク・ウォビゴン効果はアメリカのホープ大学の心理学者ディビット・マイヤーズによって名づけられました。
ギャリソン・キーラの「レイク・ウォビゴンの人々」という作品に登場するレイク・ウォビゴンという街がその由来です。
そこでは女性は皆力強く、男性は皆イケメンで子供たちの知能は平均よりも上回っています。
実際にそのような街は存在しませんが、常に「自分は平均よりも優秀だ」と考えることはそれを信じるのと同じくらい愚かなことです。
80%の人が自分は車の運転が上手いと思っている
レイク・ウォビゴン効果は様々なアンケート調査などでもよく見られます。
例えば高校生に「他人と仲良くする能力」についての自己評価を尋ねたところ、平均以下と答えたのは全体の1%未満だったという調査があります。
60%が自分は上位10%にいると答え、25%が上位1%にいると答えたのです。
また車のドライバーを対象にした調査では回答者の80%が自分の運転技術は上位30%に入っていると考えていることが分かりました。
他にも大学教授の94%が平均以上の仕事をしていると答えた調査結果などもあります。
レイク・ウォビゴン効果は仕事の技能、投資能力、他者への公平性や人間性など様々な特性に関する研究で繰り返し発見されています。
騙されないと思っている人が詐欺に引っかかる
自分の能力をポジティブに捉えることは自己肯定感を高め、実際のパフォーマンスに影響することもあるので悪いことばかりではありません。
しかし、どんな場面でも自分の肯定的な資質と能力を過大評価し、否定的な資質を過小評価して行動すると危険です。
投資詐欺に引っかかる人間は「自分は騙されないだろう」と思っているから騙されるのです。
病気にならないと思っている人間も健康管理が疎かになりがちです。
客観的に自分を見ることができると思っている人間も危険です。
ある調査によると「自分は仲間よりも正確な自己評価が出来ていると思いますか?」という質問にほとんどの人が「はい」と答えたのです。
向こうからやってくる儲け話は全て詐欺だと思ったほうが良いです。
参考文献:Nan L. Maxwell and Jane S. Lopus(1994)The Lake Wobegon Effect in Student Self-Reported Data.