「御社を買いたい」「資本業務提携したい」という電話や手紙は99%嘘

M&A

「御社を買いたい会社がある」という連絡が増えている

中小企業に対し「御社を買いたい会社がある」「資本業務提携したいという会社がある」という電話を掛けてくる会社がここ数年でかなり増えましたね。

私のお客様でもこういった電話を受けたというところがたくさんあります。中には手書きの長文の手紙が送られてきたという会社もあります。しかも内容が少しポエムで気持ち悪かったりすることも…

こういった連絡を受けると、本気で信じてしまう人もいますが99%嘘ですから騙されないように気をつけてください。

少し前ですが某有名M&A仲介会社からこういった電話がきて不安になっているお客様がいました。なので代わりに私が折り返し電話をして確認したことがあったのですが見事に嘘でした。営業マンが売手企業を探すために嘘を言っているだけだったのです。

中小企業を名指しで買いたいと依頼する会社はない

日経新聞で『外資系ファンド vs. 創業家の買収攻防』などと題された記事を見ていると、1社をピンポイントで狙う会社があるのもおかしくないように思えてきます。しかし、上場していない中小企業をピンポイントで買いたいという会社は滅多にありません。

自社以外では絶対に不可能という特殊な技術を持っているとか、特許を持っているというのであれば別ですが、中小企業のM&Aにおいて指名買いはほとんどないのです。

もちろん成長戦略の一環としてM&Aを検討している会社から「買収できそうな候補を探してほしい」という依頼はたくさん来ます。しかし、その場合でも業界とエリア、規模の要望を言われるぐらいで「ここの会社を買いたいから仲介してくれ」と言われることはありません。

☑︎M&Aの買い手の目的!中小企業を買収する狙いは何か?

なぜM&A仲介会社は嘘をつくのか?

なぜM&A仲介会社の担当者は「御社を買いたい会社がある」とか「資本業務提携したがっている会社がある」と嘘をつくのでしょうか?

それは単に「会社を売りませんか?買い手を探しますよ」と言ったのでは断られる確率が高いからです。なので具体的な話が来ていると言って興味を持ってもらおうとしているのです。

中小企業のM&A仲介においては「売ります」という会社を確保してから、買手候補を探すというパターンが最も成功率が高いですから、まず売手を探すのです。皆さん必死です。

そして、実際に「御社を買いたい会社がある」と言われたオーナー経営者の中には、買いたいと思われるくらい良い会社なのだと嬉しくなって「話ぐらい聞いてみようかな」となってしまう人もいるのです。

また冒頭で書いた私のお客様のように「狙われているの!?」と不安になって、話を聞いてしまう人もいるのです。上場していないのですから狙われたところで手出しはできないのですが、突然そんな電話が来れば不安になることもあるのです。

不動産で言うところの地面師的な人たちが企業買収の世界にもいるのではないか?と疑いを持つ経営者だっているかもしれません。実際に吸血型のM&Aは存在しますからね。

「買いたがってる会社がある」と電話してくる会社に依頼してはいけない

「買いたがってる会社がある」という電話が掛かってきたとき、偶然にも売却を考えていたタイミングだったということもあるかと思います。セールストークと分かっていても「せっかくだから話ぐらいは聞いておこう」と考えるかもしれません。

しかし、これはおすすめしません。こういう嘘をつく会社というのは倫理観が著しく低いからです。

今はM&A仲介に対する悪いイメージを払拭しようという業界の流れがあります。M&A仲介協会も倫理規定を定めていますし、中小企業庁も仲介会社に対して「変なことするなよ」と睨みを利かせています。

このよう流れの中で「買いたいと言っている会社がある」などと嘘をつくような会社がまともなはずないと思います。

仮に会社の指示ではなく、担当者の暴走だったとしても、そうさせてしまう空気が社内に蔓延しているということです。ノルマが厳しい売上至上主義の会社なのです。

このような会社は売手の希望よりもM&Aを成立させて手数料を得ることを優先します。そのため不利な契約を結ぶことになったり、不本意な買い手に売らざるを得なくなる可能性が高いのです。

仮に「M&Aをしない」という決断をしても、一度でも話を聞いてしまったらその後「売る」というまで、しつこく電話し続けてきますから気をつけてください。

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「私は騙されやすい経営者です」と言ってはいけない

最近はこの手の嘘も巧妙になってきており、会社ごとにカスタマイズした文面の手紙を送ってくることもあります。

会社のことについて詳細かつ具体的なことが書かれていると「本当に当社を買いたがっている会社があるんじゃないか?」と思うかもしれませんが、ホームページや過去の取材記事を見ればいくらでもそれっぽい内容を書くことができます。くれぐれも騙されないようにご注意ください。

余談ですが取材を受ける側が協力金名目などでお金を払って、インタビュー記事を掲載してもらう媒体(いわゆる取材商法)がありますが、ああいったものに載るのはおすすめしません。

なぜなら「私は騙されやすい経営者です」と宣言しているのと同じですから、M&A仲介に限らず様々な胡散臭い営業の電話が掛かってくるようになります。