M&Aの成約率!「売り」は5割、「買い」は1割。そもそも売れる会社の割合は何割か?

M&A

会社を売りたいと思っても絶対に売れるわけではありませんし、買いたいと思っても絶対に買えるわけではありません。

どちらも相手のあることですから、いつでもうまくいくとは限りません。むしろM&Aはうまくいかないことの方が多いといえるでしょう。

そこで今回は中小企業のM&Aの成約率について解説します。

「売り」の成約率は5割

オーナー経営者から「会社を売りたい」と希望するケースでは、買い手が見つかり無事にM&Aが成約する確率は5割に届かないくらいです。これはかなり高く見積もった数字です。同業者の中には「3割もいかないでしょ」という人もいます。

仲介会社やアドバイザーによって、M&Aの成約率はかなり異なります。なぜこんなに差があるのかというと、相談された段階で「受けるか断るか」の基準が異なるからです。

売れる会社の割合

売り手発信でのM&Aの成約率が5割くらいというと「けっこう高いな」と思われるかもしれません。しかし、これはあくまでも仲介契約やアドバイザリー契約を結んだ中での割合です。

というのも、売りたいと相談に来る会社の中で、実際にM&Aの対象となる会社は少ないのです。相談に来た中で「売れる」と判断できる会社はざっくりと2~4割ほどです。100社が相談に来ても20~40社しか売れる可能性のある会社はないということです。

「期待している金額よりも遥かに安い金額でもかまわないから売ってくれ」という会社も含めればもっと多くなるでしょうが、基本的には売れない会社の方が多いのです。売れると判断された会社の中での成約率が5割ということです。

M&A仲介の会社ごとに異なる基準

そしてこの売れるかどうかの判断基準と、どの程度の売れる見込みなら仕事を受けるかという基準はM&A仲介の会社によって異なります。1%でも売れる可能性があるなら仕事を受けるという会社もあれば、成功報酬なのだから売れる可能性の高い案件しか受けないという会社もあります。

この基準が成約率の差になっているのです。緩い基準で仕事を受けている仲介会社であれば、成約率は低くなります。反対に厳しい基準で受けている仲介会社の成約率は高くなります。高い成約率をアピールしている会社というのは、入口の時点で絞っている可能性が高いと考えられます。

もちろん、それ以外に仲介会社の実力によっても成約率は変わってきますけれどね。

☑︎M&Aで「売れる会社」と「売れない会社」の特徴。中小企業の経営者必見!

「買い」の成約率は1割

では買い手発信でのM&Aの成約率はどうでしょうか?

こちらはかなり低くなります。1割くらいです。業種を指定せずに、多角化経営や何らかのシナジー(相乗効果)が見込めそうな会社であればどの業種でも良いという場合でも、やはり2割程度ではないかと思います。

何でも良いから買います!赤字でも借金だらけでも買います!というならどこかしら買えるでしょう。でもまともな仲介会社であれば「吸血型M&Aを狙っているのでは?」と疑って仕事を受けてくれない可能性のほうが高いと思います。

買い手発信のM&Aはアポイントさえ取れない

買いたいという相談が来たら、まずは買収候補となる会社を探します。そして数十社分のリストを作り、買い手の希望順にアプローチしていくのです。

しかし、突然、「会社を売りませんか?」と言われて売ってくれるところなど滅多にありません。打ち合わせのアポイントさえ取れないことのほうが多いです。特に最近は一部のしつこい迷惑電話を掛けまくっている仲介会社のせいで、業界全体が悪いイメージを持たれていますから「M&A」と言っただけで拒絶反応を持たれてしまうのです。

何年掛かっても良いから、と気長に構えているならいつかは買える企業は出てくるかもしれませんが、1年以内に成約させたいというケースでは、やはり成約率は1割、よくて2割くらいと思っておいた方が良いと思います。

☑︎M&A仲介会社からのしつこい迷惑電話と手紙!中小企業庁への苦情の効果が出始めていると思う

買い手の問題は買収資金の調達

さきほど、「売りたい」と言っている会社でM&Aの対象となる会社は2~4割と説明しました。これに対して「買いたい」と言っている会社で買える可能性のある会社はもっと多いです。

あくまで財務面や経営力のみで考えた場合ですが、売りたい会社さえ見つかれば成立するという会社がほとんどです。

問題となるのは資金調達です。全額を手持ちの現金で支払ってもまだ余裕があるというなら問題ありませんが、融資で賄うという場合には銀行の審査が通るかどうかになりますから読めない面もあります。

売上高に対してあまりに大きな金額の買収では、貸してもらえない可能性が高いですから、そういったケースでは難しくなります。

個人で会社を買いたいというケース

三戸政和さんの書いた『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』という本がベストセラーになった影響だと思うのですが、個人で会社を買いたいという人も増えてきました。

ただやはり個人の場合はM&Aのことをあまり理解していないパターンも多いです。「それは不動産会社や人材派遣会社に依頼する仕事ではないでしょうか…」といったような問い合わせが来ることもあります。

個人の場合、創業した会社を売却して数十億円の資産を所有していることが知れ渡っているなら別ですが、そうではない普通の会社員がM&A仲介会社に相談に行っても相手にしてもらえないことのほうが多いです。「話だけ聞きたい」という個人からの問い合わせが増えて迷惑しているという同業者もいました。

もちろん飲食店などのスモールM&Aを得意にしているところであれば、仕事を受けてはくれるでしょうが、手数料が買収価格よりも高くなるということもあり得ます。

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M&Aが成約しないのに料金を取る会社に注意

ここまで説明してきたように、M&Aは売り手発信のケースのほうが成約率は圧倒的に高くなります。

「会社を売りませんか?」という電話がしつこいほど来るのに、「会社を買いませんか?」という電話があまり来ないのはこのためです。売りたいという会社が見つかれば、買いたい会社を探すのはそれほど難しくないのです。それでも全体で見れば半分以上は売れない会社なのですけれどね…

それから、「どんな会社でも売れます」という仲介会社には要注意です。このようなことを言っている会社は、手付金やコンサルティング料という名目で、お金を取ることが目的です。会社が売れなくても、料金を支払わせることができるので、どんな会社からの依頼でも受けるのです。

これは買い手の立場でも同じです。買えないと分かっているのに「買収候補を探すのでコンサルティング料をください」と言う仲介会社もありますから気をつけてください。