M&Aで「売れる会社」と「売れない会社」の特徴。中小企業の経営者必見!

M&A

今回はちょっと硬めの記事です。M&Aで売れる会社ってどんな特徴があるの?というお話です。

中小企業のM&Aにおいて、買い手の高い関心を引く「売れる会社」には魅力的な強みがあります。一方でどんなに安くても見向きもされない「売れない会社」には解決すべき課題があります。

中小企業経営者がM&Aを成功させるためにはそれぞれポイントをしっかりと抑えておく必要があります。ということで、それぞれの会社にどんな特徴があるのか具体的に説明していきます。

現時点では会社を売却するつもりがなくとも、将来的にその可能性があるなら、以下の点を踏まえて企業を整備しておくことをおすすめします。

売れる会社の特徴

1.財務状況が健全である

売れる会社に共通している特徴の一つが安定した財務状況です。企業の収益性、安定性、そして成長性がしっかりと確保されていることが、買い手にとって大きな魅力となります。例えば、自己資本比率が高く、借入金の返済負担が少ない企業は財務的なリスクが低いため、「買収後の経営も安全に行えるだろう」と判断されやすいです。

2.収益構造が安定している

売上が単発的な案件に依存していないことも重要です。売上の大部分が少数の大口顧客から発生している場合、業績が一顧客の取引に大きく左右される可能性があるため、買い手にとってリスクと見なされることが多いです。売れる会社は、販売チャネルが広く、複数の安定した顧客から収益を得ています。それが事業の安定性の保証にもつながります。

3.独自の強みや競争優位性がある

市場における競争優位性や他社にはない強みを持つ企業は、買い手にとって非常に魅力的です。たとえば、独自の技術力、ブランド力、または差別化された商品やサービスがある企業は、市場でのポジションを守りやすく、成長ポテンシャルも高いと評価されます。このように競争優位性がある企業はM&A後のスケールメリットを期待できるため、投資価値があると判断されやすいです。

4.ビジョンや戦略が明確になっている

成功している中小企業はビジョンや将来の成長戦略をしっかりと持っています。組織全体がビジョンに向かって統一された実行力のある企業はM&A後も一貫した成長が期待できると評価されやすいです。ビジョンが明確であれば、買収後のシナジー効果も描きやすく、事業の引き継ぎも円滑に行われる可能性が高まります。

5.専門性の高い人材が充実している

会社を支える人材が充実していることもM&Aで売れる会社の重要な条件です。経営者がキーマンとして多くの役割を担っている場合、M&A後の経営者交代によるリスクが高くなります。そのため、経営者に依存せず持続的に会社を運営できる体制が整っていることが望ましいです。経験豊富で専門性の高い人材が揃った組織力の強い企業は、買い手にとって魅力的に映ります。

6.コーポレートガバナンスが整備されている

法令遵守やガバナンスが整っている企業は信頼性が高いことが買い手にとっての安心材料になります。どんなに小規模な企業であったも透明性のある経営、健全なコンプライアンス体制、内部統制システムが確立されていることがM&Aを円滑に進めるための条件です。買収後のトラブルを避けるためにも法的なリスクが低い企業は魅力的なのです。

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売れない会社の特徴

1.財務状況が不安定

売れない会社の典型的な特徴として財務状況が不安定であることが挙げられます。売上が低迷している、利益率が低い、あるいは負債が多すぎるなど、財務の健全性に課題がある企業は、買い手にとってリスクが高いため敬遠される傾向にあります。また、税金の滞納や不適切な財務処理がある企業も買収の対象にはなりにくいです。

2.特定の顧客への依存度が高い

特定の顧客や取引先に依存している場合、収益の変動が大きいため、事業の安定性を低く見積もられがちです。売上の多くが特定の顧客から発生していると、その顧客との関係が悪化した場合、会社の存続に影響が出る可能性があるため、買い手にとってはリスク要因となります。

3.技術やノウハウが独自ではない

他社との競合が激しい、あるいは差別化が難しい事業内容の場合、魅力が低いと判断される傾向があります。特に、製品やサービスがコモディティ化されている場合、価格競争に巻き込まれやすく、利益率も低くなりがちです。差別化された技術やノウハウがない企業は、買収後の成長戦略が見えにくいことから、M&Aの対象とされにくいです。

4.経営体制が不透明である

経営の透明性が欠如している場合、買い手にとって大きなリスクとなります。たとえば、財務状況が不透明、内部統制が不十分、コンプライアンス意識が低いなどの問題があると、M&Aの検討段階で問題視されることが多いです。また、社内の経営方針が曖昧である企業も、統合によるシナジーが不明瞭なため、買い手にとって魅力が低くなります。

5.経営者への依存度が高い

会社の運営が経営者個人のスキルやネットワークに依存している場合、その経営者が離れると事業が不安定になるリスクがあります。特に中小企業では経営者が「ワンマン経営」をしているケースも多く、こうした企業は買い手にとって敬遠されがちです。経営者の交代がスムーズに行えない企業は、事業の引き継ぎに不安が伴うため売れにくくなります。

6.ガバナンスの問題や法的リスクがある

法令違反やガバナンスの欠如がある企業は、買収後に大きなリスクを抱える可能性が高いため、売れにくくなります。たとえば、労働基準法違反や契約違反などがある場合、買い手にとっては法的なリスクが伴います。これらの問題が発覚すると、M&Aプロセスが進まなくなるケースが多いです。「残業代の端数切捨てくらい」と甘く考えている経営者もいますが、コンプライアンスを重視する会社ではとても嫌がられます。

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M&Aを成功させるためのポイント

現状、で上記のような「売れない会社」の特徴を備えていたとしても、改善することで「売れる会社」へと変革することは可能です。そのためには財務の健全化、収益の安定化、独自の強みの確立、人材育成、ガバナンスの整備など様々な改革が求められます。

また、買い手が不安視するであろうリスクや不安要素を事前に取り除くことで、M&Aの交渉が円滑に進む可能性を高めておくことができます。M&Aを検討する経営者は、これらの要素を見直し、自社の改善点を特定することが重要です。

それから、赤字だからといって絶対に売れないということでもありませんから、自分自身で財務の健全化を行うより、資本力のある他の企業に任せた方が良いと考えるなら、その時点でM&Aを検討するのも手です。(参考:会社を売りたいけど赤字、M&Aは不可能か? 売却できるパターンとできないパターン