M&Aのアドバイザーは怪しい奴らばかり。胡散臭い相手を見極める注目ポイント

M&A

残念なことにM&Aの世界は怪しい人間が多いです。最近はニュースや経済誌でも問題として取り上げられるようになっていますから、知っている人も多いとは思いますが…。それどころか会社に毎日のように怪しい電話が掛かってくるという経営者も多いかもしれません。

そこで今回は中小企業のオーナーが騙されないために、怪しいM&Aアドバイザーの見分け方を説明します。アドバイザリー契約を結ぶ前に必ず確認しましょう。

一般にM&Aのアドバイザーといったら売り手か買い手のどちらか一方についてアドバイザリー業務を行う者を指しますが、今回は双方の間を取り持つ仲介も含めてアドバイザーとします。

1.契約書の内容が理解しにくい、説明が不十分

M&Aには2つの重要な契約があります。1つはアドバイザーとのアドバイザリー契約、そしてもう1つは相手企業とのM&Aの契約です。どちらも馴染みのない契約ではありますが、理解できないということは絶対にありません。仮に理解できないときはM&Aをするべきではありません。

しかし、怪しいアドバイザーは理解しにくい複雑な契約書を用意し内容を把握させずにアドバイザリー契約にサインさせることがあります。このような場合、不利な条件が含まれていることが多く、後になって不当な費用を請求されたり不利益を被ることが多いです。

基本的にアドバイザーはアドバイザリー契約の内容を納得してもらえるまで丁寧に説明します。これはオーナーのためでもあり、自分のためでもあります。というのもオーナーの中には「そんな細かいこと説明しなくていいよ」と面倒臭がるタイプもいます。アドバイザリー契約のときにこのような態度でも困りませんが、その後の相手方もいるM&Aの契約で同じ態度を取られるとかなり気まずいです。相手方への印象も悪くなります。そのため、事前のアドバイザリー契約の時点で細かく説明し、「M&Aの契約というのはこういうものなのね」と認識してもらっておくのです。

ですからアドバイザリー契約の内容をきちんと説明しないアドバイザーとは契約をするべきではありません。仮に詳細に説明されたとしても、ほんの少しでも違和感があるならサインするのはやめましょう。

2.アドバイザリー契約の即決を迫る

最初の相談段階から強引にアドバイザリー契約を迫るアドバイザーには要注意です。通常、信頼できるアドバイザーは企業の売却や買収についての状況や課題をじっくり理解しようとし、無理に契約を求めることはありません。またオーナー自身にも本当に今売るべきか?買うべきか?を熟考するよう促します。

しかし、怪しいアドバイザーは自分の報酬を優先するあまり、相手の状況に関係なく、早急に契約を進めようとします。たとえば、「今すぐ契約して相手探しをしないと売り時(買い時)を逃します」などとプレッシャーをかけてくるのです。

確かに数年後も同じ市場環境ということはないでしょうが、数週間後に市場が大きく変わるということは、世界大恐慌でも起こらない限りはあり得ません。引っ越しシーズンのお部屋探しではないのですから、こういった「今契約しないと…」という嘘に騙されないようにしましょう。不動産の客付けが言う「今契約しないと他のお客さんに取られますよ」も大抵嘘ですが…。

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3.楽観的な見通しを述べるアドバイザー

楽観的な見通しのアドバイザーも怪しいです。具体的には「希望金額で売却(買収)できると思いますよ」と軽々しく言うタイプです。

M&Aの成約率!「売り」は5割、「買い」は1割。そもそも売れる会社の割合は何割か?」の記事でも説明しましたがM&Aは成立する可能性のほうが低いのです。内容の良い会社が「売ります」といっても、その半分は成立しないこともあります。それなのに楽観的な見通しを言うアドバイザーは市場を理解していないか、手数料を得ることだけが目的になっているのです。

ファイナンシャルアドバイザーの料金体系には「成功報酬型」と「着手金や月額のコンサルティングフィーが発生する型」があります。自社の財務戦略の見直しや長期の経営戦略を策定してもらのであれば、その仕事自体が価値を生み出しますから、着手金や月額料金、コンサルティングフィーを支払うのは当然でしょう。

しかし、M&Aの成立を目的にアドバイザー契約する場合には、株式や事業の譲渡契約が成立しなければ顧客側には何の価値も残りませんから、成功報酬が適切といえます。

M&Aが成立しようとしまいと、手数料を取るアドバイザーはそのお金だけが目的になっていることが多いです。このようなタイプは楽観的な見通しを述べて、顧客に期待を持たせ、契約させようとするのです。M&Aが目的であれば成功報酬でないところは避けるのが安全だと思います。

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4.断っても営業電話を掛けてくる

M&Aは市場が伸びているとはいえ、参入してくる会社や個人も年々増えていますから競争も激しいです。そのためM&Aのアドバイザーが1日中、営業電話をしているという会社も珍しくありません。営業電話をしていてもM&Aの実務能力が高くなることはありませんから、このようなことをしているアドバイザーのレベルは疑ったほうが良いでしょう。もはやアドバイザーではなくテレフォンアポインターなのです。

またひたすら営業をさせるような会社は売上至上主義ですから、企業オーナーの意向よりもM&Aを成立させることを優先させる傾向があります。このような会社に依頼すると、売ったり買ったりした後に後悔する可能性が高くなります。ですから営業してくるアドバイザーは怪しいと思ったほうが良いでしょう。

とはいえ、既に売り手や買い手からの依頼を受けている中で、「この会社とこそ一緒になるべきだ」と思える会社に連絡することはあります。このような場合にはあなたの会社のことをどれだけ理解しているか確認すれば分かります。それに一度断ればそれ以降は連絡してくることもありません。少し質問をして具体的なことが言えないようなら片っ端から営業しているだけといえます。

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5.「M&Aに詳しいですね」と言ってくる

最後にあらゆる詐欺から身を守るためにぜひ知っておいてほしい心理学の知識があります。M&A業界に限ったことでなく、保険や投資、不動産でもそうなのですが、胡散臭い契約を結ばせるときの常套テクニックというのがあるのです。

どんなものかというと顧客に「自分はこの件に詳しいのだ」と思わせることです。

人間というのは簡単に「自分は詳しい」と思わされてしまうことがコーネル大学の研究者らの実験でも分かっています。簡単なテストで高いスコアを取るだけで詳しいと勘違いするのです。このような勘違いをさせられると「自分一人で判断しても大丈夫」という心理になり、詐欺のような契約でも深く考えずに判子を押してしまうのです。

このことを金融関係の怪しい連中は経験で知っていますから顧客を褒めるのです。「もしかして過去にこの業界で働いてましたか?あまりに詳しいので」などと言ってその気にさせるのです。

しかもこう言われてしまうと、「相手の中に作られた自分の『詳しい人』というイメージを壊したくない」という心理が働きますから、分からないことがあっても質問しにくくなります。特に経営者という立場にいる人ほど、分からないから聞くということを恥と思う傾向が強いですから騙しやすいのです。

もしアドバイザーが「M&Aに詳しいですね」と言ったら怪しいと思ったほうが良いです。

参考文献:Stav Atir, et al, (2015). When Knowledge Knows No Bounds: Self-Perceived Expertise Predicts Claims of Impossible Knowledge.